第3章 点火の後

アシュタールに出会ってから、私の住む世界は次第に変わり始めた。
 
それまでの私は、どちらかというと受け身で、あまり自己主張をするタイプではないはずだった。
けれどあの日以来、薄皮を剥くように少しずつ、自分の本当の気持ちを新たに発見する事が多くなった。
 
私は人を癒す事に喜びを見出し、それまでの仕事を辞め、リラクゼーションの仕事に就いた。

けれど、外に出て遅い時間まで働く事に、夫はあまりいい顔をしなかった。
 

夫には、自分にないものを感じて結婚した。
結婚して、すぐに子供が出来た。

数年後、仕事のストレスからか、夫は感情的に怒鳴る事が多くなった。

夫は周りの事はお構いなしにマイペースで物事を進めるタイプの人だった。
自己主張のなかった私は、夫とほとんど喧嘩した事がなかった。
私が夫に合わせる代わりに、夫なりに私を守ってくれている、そんな関係だった。

けれども自我が芽生え、自分でやりたい事がはっきりと見えてくるようになると、夫の言動が、私を否定するものに変わってきた。
私の方も、ただ黙って耐える事はなくなり、夫に意見するようになった。

それでも、またいつか一つになれると信じた。
 
変わりつつある自分を、受け入れてもらう努力をする私と、今まで通りの関係を維持しようとする夫。

言いかえれば、お互いが成長するために必要な相手だったのかもしれない。
けれど、いつからか、一緒にいて心休まる相手ではなくなっていた。
 

私は、夫と別れる事にした。

夫に別れる意思があることを伝えると、
「自分も変わるよう努力する。」
と言った。

けれど私は、
「ありがとう。でももう変わらなくていいよ」
と返事をした。
 
変われるなら、今までも充分すぎるほどチャンスはあったはずだった。

もしかすると、お互いを変えようと努力すること自体が、間違いかもしれないと思うようになっていた。

私が「点火」されなければ、結婚生活はずっと続いていたかもしれない。

けれど私は、自分らしい本当の生き方にようやく出会えたと思っていた。
もう後戻りはできなかった。

夫と何度も話し合い、家族にとって何がベストなのかを考えた。
そして、別れる時期を、子供の成長を待ってからにするという結論に至った。


自分の波動が変わるたびに、出会う人、去ってゆく人がいた。私の周りの環境も、少しずつ変わっていった。

点火を経験するという事は、それまでの人生ではなくなってしまうという事だったのだ。


あのセッションの最後に、アシュタールは、
「あなたはずっと、ソウルメイトを探し続けています」
と言った。
 
子供の頃からずっと、自分には魂の片割れがいると信じていた。
その相手と出逢うのを夢見て、自分が探していたのは夫だと思って結婚した。

けれどアシュタールに出会った頃には、本当に今の夫が、自分の探していた相手なのかと考えるようになっていた。

結婚した事は、間違いではなかった。
ただ夫と私、2人がともにいる事で学ぶべき事は、すべて学び終えた。そんな感覚だった。

後は、子供の成長を待つだけだった。
彼らが、自分たち親を必要としなくなるまで、待つつもりでいた。

その一方で私は、自分とそっくりの魂を持った唯一無二の存在が、この世界のどこかにいるのではないかと、漠然と思いを巡らせていた。