第5章 シンクロ

1年ぶりのアシュタールとの再会で、私は、前世でも今の家族と縁があった事を知らされた。

そして今が家族みんなにとって、大きな変化の時であり、子供たちは、その変化を受け入れてくれる事や、私にはやらなければならない事がある、という事を教わった。

 

ただ、その時期について、アシュタールは限定しなかった。

宇宙の意思、運命、そして人間の自由意志がその時期を調整可能にしているとだけ答えた。

 

 

そのセッションの後、緑が青々と茂った庭とアースクリスタルの前で、三揃えのスーツの彼と軽く言葉を交わした。

 

 

それから、時々彼は、私の店に来るようになった。


いつも背中の痛みを訴えていた。
触れると、脊柱に沿って筋肉が硬くなり、背中全体に強い張りがあった。特に肩甲骨の内側が痛むと言っていた。

 

私はふざけて、

「天使の羽根でも生えてきてるんじゃないですか?」

と言った。
彼は、

「そういう事ならいいんだけどね」

と苦笑した。

 

彼が店に来る時は、なぜか他のスタッフやお客様が全くいない、暇な日だった。


彼と私の話題は、いつもスピリチュアルでマニアックな内容で、そういった話が通じる相手が周りにあまりいなかった事もあって、私は彼との会話を心から楽しんでいた。

時間を忘れて、ずっと話し込んだ時もあった。

そして自然に、お互いをハンドルネームで呼び合うようになった。

 

私たちは、内面がよく似ていた。

見えない世界の存在を信じているところ、そして、まるで同じ発信源から言葉を受け取っているかのような感覚的思考。

 

彼といると、まるで自分にも超能力が身についたのではないかと思うほど、お互いを理解し合えた。

 

彼と出会ってから、身の回りでたくさんのシンクロが起き始めた。

彼からのラインが来る直前に画面を見る、という事はしょっちゅうだった。

同じナンバーの車を何度も見たり、自分が口ずさんでいた曲が、直後にラジオから聞こえて来たり、私と彼が交換したCDに同じ曲がいくつも入っていたり。


彼は、とても不思議な人だった。

自分が前世で関わった人と出会うと、その人の前世も見えるという、特殊な能力を持っていた。

 

私との前世で、彼が思い出したのは、どこかのジャングルに住む部族だった時代の事。

 

そのイメージの中で、2人は敵に捕らえられていた。私たちには、秘密を守るという使命があったが、敵は私を人質にして、秘密を喋らなければ殺すと彼を脅した。

彼は秘密を守る方を選んだ。
私は彼の目の前で殺され、その後すぐに、彼も殺されるという、哀しい前世の記憶だった。

「その時のルーシィの目が、忘れられないよ。」

と、彼は言った。

 

私は、その時代の2人の事を、もっと詳しく聞きたがった。

けれど彼は、それ以上思い出したくないらしく、教えてはくれなかった。

 

ただ、私たち2人は何度も一緒に生まれ変わり、家族だったり友達だった事もあったと言った。

 

私たちは、おそらく何かの見えない力によって、出会わされたに違いなかった。

 

そんなある日、背中の痛みが酷く、病院に行くと言っていた彼の事が気になり、メッセージを送った。

 

そして彼からの返事が来た。

「どうやら僕は、自己消滅を現実化してしまっている様だ」
「どういう事?」
「ある病気の診断を下された。これ以上は、ここで言いたくない。今度会った時に話すよ」

 

私は初めて彼をランチに誘った。
数日後に会う事になった。

 

約束の日。私は咳をしていた。連日のオーバーワークで疲れが溜まっていて、もう1週間も治っていなかった。


彼はいつものようにスーツ姿で、私より早く来て待っていた。


話の内容が深刻なものである事も踏まえて、人目が気にならない様に、個室のあるレストランを選んだ。

 

膵臓癌だって」
最初、他人事の様に、彼は言った。

 

数日前、テレビでたまたま膵臓癌の特集を見ていた私は、その病気をある程度、理解していた。

痛みが出てから見つかった膵臓癌は、すでに進行している事が多いという事も知っていた。

 

「レベル4だ。余命6ヶ月と言われたよ。

明日から入院する。抗がん剤治療を受ける事になった」
彼は、平然と言った。


その表情は、むしろ私がショックを受けたのではないかと心配しているかの様だった。

 

「大丈夫。ミッキーは普通じゃないから。」

私が彼を勇気づけようと冗談っぽく言うと、彼は笑顔になった。

「みんな、そう言うよ。」

 

別れ際に私は、彼の病気が良くなるように、天使に依頼すると約束した。


「ありがとう。お願いするよ。それより、その咳を早くどうにかしないとね。お大事に」

 

自分が末期癌の宣告を受けたばかりというのに、普通だったら他人の事なんかどうでもいいと思ってしまいそうなのに、彼はそうではなかった。

自分より他人の気遣いをする彼に、私は心を打たれた。