第10章 魂の伴侶

彼が鹿児島に経った数日後、私は再びアシュタールの個人セッションを受ける事になっていた。

 

私は、アシュタールに尋ねた。

「彼と私の間には、何か特別なものを感じるのですが、私たちは一体どういう関係なのでしょうか?」

アシュタールは、即座にこう言った。

「You are his wife」(あなたは彼の妻です)

そして、こう続けた。

「あなた方は、プレアデスで夫婦でした。その他、イギリス、フランス、エジプト、ペルー、オーストラリア、そしてレムリア、それぞれの時代で夫婦として過ごしました。」


そうなんだ、やっぱり。
私が探し続けていた人は、彼だったんだ。
そしてプレアデスでアシュタールを出迎えた時、彼の隣にいたサマンサは、私だ。

 

驚きはなかった。

むしろ、腑に落ちた、という感覚だった。

 

私は最初にアシュタールに会った時、

「あなたはずっと、ソウルメイトを探し続けています」と言われたのを思い出した。

 

その通りだった。私は、自分の魂の片割れがどこかにいると信じていた。
その相手は、自分と共通の何かを持つ人だと感じていた。

結婚した相手がそうではないと気づいてからも、ずっとずっと心のどこかで探し続けていた。

 
そのセッションを私が受けていた頃、彼は移動の車の中だった。

その日は珍しく、彼がフェイスブックに画像を投稿していた。

それは、車の走行距離のメーターを写したものだった。

「222222」
2ばかりが並んだ画像。

私は、エンジェルナンバーで数字の意味を調べてみた。
2が6個並んでいる数字の意味。

 

そこには、こう書かれていた。

「恋愛において、ソウルメイト、パートナーと完全に統合された愛情、魂で結ばれた愛情を表わす高貴なスピリチュアルナンバーです。」

 

アシュタールか天使が、また悪戯をしたのかもしれない、と思った。

私は、「いいね」をクリックした。

ちょうど私の「いいね」が22件めにカウントされた。


私は、アシュタールのセッションの後、彼に前世で夫婦だった事があるらしいとラインで伝えた。
すると、彼はこう言った。

「マーガレットはそうだろうね。でもルーシィとは、恋人や夫婦にはなれない。」

 

その言葉を聞いて、私はまた振られた気分になった。
私が傷ついてる雰囲気を悟ったのか、彼は続けた。

「ルーシィは、あたかも当たり前のように俺のオーラの中に入ってくる。

かと言って、厚かましさとか熱血とか、侵食とか、無理やりとかはなく、本当に自然にいとも簡単で。

いつからと言われても、気づいた時にはそうなっていた。大きな衝撃もなく、なんじゃコリャって感じ。」

 

「オーラが混ざるって、どういう事なの?」

 

「わからない。今までこんな風にオーラが混ざる相手と過ごしたことがないから。」

 

「ふうん。」

 

「ただ、過去がどうであれ、明日生きてるかわからない命なのに、恋愛とか、まともに考えられない。今生きてることで精一杯なんだ。」


彼は、ずっと1人で闘っていた。

そんな彼に、見返りなど期待してはいけないんだと改めて思った。

その上で、それでも彼のそばにいたいと思うなら、それは自分がそう望んでいるからで、やりたくてやってることなんだと自分に言い聞かせた。

「別にそれでもいいよ。でも、自分で全部背負い込まないで、しんどい時は手伝うから。何でも言ってね。」

「ありがとう。」


彼とは、よく超常的な話をした。
宇宙のこと、次元の違う世界のこと、闇の世界のことも。
彼は、一体どこでそんな知識を仕入れてきたのか、いろいろ知っていて、いつまでも話題が尽なかった。


彼は、スピリチュアルの聖地であるシャスタに行きたいと言い始めた。

理由を尋ねると、シャスタという音の響きが気になる、と答えた。

 

「シャスタ山の上空では、アシュタールの船が時々見えるらしいよ。あの山の上には、プレアデスのポータルもあるんだって」

 

私が最近読んだ本で得た情報を、知ったかぶりでいうと、彼は興味深々だった。

 

「結局、これもアシュタール絡みなんだな。」

彼は、まるで自分たちの周りに見えない存在がいて、どこかに導こうとしている様に感じると言った。


やがて彼は、具体的にシャスタ行きの計画を立てるようになった。

 

「ルーシィが行かなくても、オレ一人でも行くけど、どうする?」

「一人で行かせられる訳ないでしょ。こうなったら、車椅子押してでも行くから。」

 

彼がネットで、安い航空券を探して手配した。
私もパスポートとESTAの申請をして、後はその日を待つだけとなった。

 

それから1週間も経たないうちに、彼の身体に黄疸の症状が見つかった。
胆管が炎症を起こして、癒着しているのが原因だった。

腹痛が今までにないほど酷く、いつも飲んでいる痛み止めが全く効かないレベルだった。その日は、夕方からオペをするはずだった。

 

「奇跡が起こるよう願って。」


いつになく心細い思いを伝えてくる彼に、胸が痛んだ。

彼とのラインのやり取りは、彼が手術室に入る直前まで続いた。

 

「麻酔から覚めたら、連絡ください」


そう送ったメッセージは、それから2日経っても既読にすらならなかった。

電話をかけても繋がらず、連絡の取りようがなくなった。

 

入院先の病院に連絡を入れても、家族でない者に病状を教えるわけにはいかないからと、取り合ってもらえなかった。

 

彼は意識のないまま、眠り続けているのかもしれない。
あるいは、危篤な状態なのかもしれない。
手術が上手くいったのかどうかも、知る術がなかった。

 

私は、改めて彼を何も知らない事に気づいた。
彼の家族の連絡先も、彼の今後も、私は何一つ知らされていなかった。

彼の世界の中に占める私の領域など、ほぼ無いに等しいのだと。

 

悪い想像をしないよう、なるべく普通に生活する事にした。でも、夜は眠れなかった。

 

度々ラインを確認してみても、彼からの返信はなかった。

 

返信は返って来ないのに、彼に伝えたい言葉がどんどんたまっていった。

 

彼の入院先は、車とフェリーで、飛ばしても丸1日かかる場所にあった。

仕事もあるし、行ける訳なかった。


けれどもし、このまま彼に万が一の事があったら、と考えると、仕事に手がつかなくなり、ミスが多くなった。

 

「どうかしたの?昨日から、心ここに在らずだよ?
何かあったの?」

 

普段仲のいい同僚が、心配して声を掛けてくれた。
私は、彼女に一部始終を話した。

 

「そっか。大変だね。
旦那さんと別れたばかりで、生活も仕事も大事だと思うけど、
10年経って振り返った時、後悔しない選択をして。」

彼女は、そう言って微笑んだ。
その言葉に、背中を押された。

 

その時、天使のカードの絵柄が、私の脳裏に浮かんだ。
それは、「Action 行動する」というカードだった。

 

気がつくと、いつも彼の事を考えていた。
私は、やっぱり彼の事を愛している。
恋人にはなれないと、何度言われても。

 

そうだ。行ってみよう。

彼の元へ。

 

たとえ彼に会わせて貰えなくても、無駄足になったとしても、彼の安否くらいは分かるはずだ。

 

その時の私にとっては、まるで彼のすべてを見届けることが、使命であるかのように思えた。

 


旅立ちを決めた夜、私は天使にお願いした。

「私のすべて彼に捧げます。もし必要なら、私の寿命が短くなってもいい。だから、どうか彼を助けてください。」


出発当日の朝、私は目覚めるなり、スマホを取って開いた。

彼からのメッセージが、来ているかもしれない、と思った。

 

その手の中で、スマホが小さく振動した。

ちょうど、メッセージが届いた。

彼からだった。

 

「オペで時間感覚なくて

わけのわからない状態だった」

 

生きてた!
彼はちゃんと生きてる。

 

「動けない。」

 

「休みもらって、鹿児島行く事にしたよ。」

 

「迎えにくる
ならドクターいうkど」

 

麻酔のせいで意識が朦朧としているのか、送ってくる文字は時々、文章になっていなかった。

 

私がどれほど心配したのか知るはずもなく、彼はおぼつかない指でメッセージを送ってきた。

 

2度に渡るオペと、麻酔の副作用、いろいろな要因が重なって、彼は歩けなくなるほど体力を消耗していた。

 

「航空機キャンセrした。」

 

「シャスタは、またにしよう。今は身体が大事。」


私は支度をして、彼を迎えに行くため、鹿児島の病院に向かって、車を飛ばした。